【内田彩LIVEレポート】21人の、内田彩。【~a piece of colors~】

      2016/09/26

生まれながらの表現者なんていないというのが、僕の自論である。
感性の差はあれど、結局、長く生きていく中で様々なことを吸収し、吐き出し、それを繰り返すうちに、独自性のある表現者になっていくのだ。
内田彩さんは、いったいどんな人生の歩み方をしてきたのだろう。
そう思わざるを得ないライブを、僕は体感した。

「AYA UCHIDA LIVE TOUR 2016 ~a piece of colors~」のファイナル公演が、2016年6月26日に開催された。もちろん僕は、この人のライブには初参加である。
先にこのライブ全体の印象を述べると、真っ先に思い浮かぶのが、衣装チェンジがアンコールの時の一度だけしかなかったということだ。衣装のほかにも、自転車を乗り回して『いざゆけ! ペガサス号』を歌った2ndライブのように、特別派手な演出があったわけでもなかった。彼女は8月に、日本武道館で持ち歌全曲ライブの開催を控えているため、余裕のある今回のツアーでは視覚的演出を施すのではという僕の予想は、いとも簡単に外れた形となる。
しかしどうやら、内田彩にとっては、「演出がないこと」こそが、「演出」になってしまうらしい。

真っ白な衣装でステージに現れたうっちーが歌い上げる『スニーカーフューチャーガール』が、このツアーを飾る一曲目だ。名の通りスニーカーをモチーフにした歌だが、片足ずつピコピコ跳ね上げながら(表現が下手)、たまに片手で自らの靴を触る仕草がなんとも可愛らしい。わたしらしく進めばいい、スニーカーフューチャーガールのうっちーは、その通り、彼女らしい世界を見せてくれる。
二曲目の『Breezin'』、これは本当にいい曲。最初に聴いたとき、「クエスチョン!気になってるコは」のメロディが『シェリーに口づけ』の「トゥートゥートゥマシェリーマーシェリー」に聴こえた時点で、何かもう、恋に落ちていた。コールによって客席も一気に熱を帯びる中、可愛らしく、けれどもかっこよく歌う彼女の姿があった。

ここで一度目のMCを迎える。内田彩=お水をいっぱい飲む人との認識の方も多いのではと思うが、さっそく、水分補給をするうっちーの姿がほほえましい。µ'sのファンミなどで、他の演者さんと比べて、どのくらいうっちーのペットボトルの中身の減りが早いのかを調べるという野望が叶えられなかったのは、僕の人生三大後悔の一つであるというのは、有名な話だが、この日も本当によくお水を飲んでいた。ああ、うらやましい、僕もうっちーに飲まれるお水になりたい。「思っている以上に緊張している」と語るうっちーだったが、そうは感じさせない彼女の表現する世界は、まだまだ広がっていく。

三曲目の『Sweet Rain』、この曲を歌ううっちーの表情は、どこか切なげで、けれど最後には前を向こうとするもので、まさにこの曲の歌詞が、彼女の表情に、全身に現れていた。
次の『Let it shine』では、強烈なドキドキ感を味わった。時折見せるヘラッという笑顔が、僕の脳に強烈に刻印される。
さて、この二曲にはどちらにも「手を振る」という歌詞が出てくるが、そのどちらともで手を振った彼女を見て、「同じ意味の手を振る」だと感じた人は、おそらくいないだろう。
その後、『Go! My Cruising!』でさらに場を盛り上げて、『Growing Going』では、まるで最後の曲じゃないかと疑うレベルのタオル回しを披露した。
さらに曲は『color station』、『オレンジ』、『Sweet Dreamer』と続いていく。いずれの曲でもうっちーは、サイリウムを振りながら歌うという演出を披露した。
『color station』は、堀江由衣を彷彿させる。そう、堀江由衣なのだ。いや、内田彩は内田彩だよ!という話なのだが、要するに演技の幅が広いという意味で、堀江由衣的感覚を内田彩で味わえる興奮に僕は浸った。披露されるロボットダンスの圧倒的愛おしさ、声の加工もバッチリで、原曲の再現に忠実だった点も素晴らしい。この曲では、サイリウムを赤と青にしてほしいと、うっちーからは要望があった。
続く『オレンジ』はもちろんオレンジ色で、会場が夕焼けに染まる。
そして『Sweet Dreamer』では紫色が、幻想的な夢の世界を浮かび上がらせた。

そんな景色を作り出すうっちーだが、再びのMCで、彼女らしい喋りが聞こえてくる。
「あーうー」、「あーあー」、「お水おいしー」。
まるでスイッチを切ったかのようなうっちーの声。どうやら、歌っているときは演者・内田彩、MCのときは素の内田彩という図式は徹底されているらしい。
色を指定しながら歌った三曲を振り返るところで、「仙台はずんだのイメージから緑、大阪は太陽のように明るい街だからオレンジ、横浜は夜景がオシャレだから紫」と発言するうっちー。仙台だけ扱いひどくね!?という感想はさておき、「みんながいつも会場を綺麗な色にしてくれるから、私も一緒にサイリウムを振りながら歌いたい」と、自らもサイリウムを振りながらのライブを考案したそう。
素敵なことを言いながらも、容赦なくお水を飲みまくるうっちーに、客席からは「お水おいしー?」の声。腐るほど言われているであろうその声に対して、「お水?おいしいよ!」と、少し丁寧な返しをするうっちーに、僕は驚いた。
内田彩さんと言えば、僕的・冷たい目で見られながら「ホント、キモい」と言われたい女性ランキング2位に君臨するため(1位は小学生時代に好きだった初恋の子、美咲ちゃん)、今回も例に漏れず、「あーもう、水は水だよ!」という返事を期待したのだ。
そんな僕の心を知ってか知らずか、「今までみんなに冷たい返しをしてたので、今回は可愛い返しがしたい」のだと話し始めるうっちー。仙台では「んだ!」、 大阪では「めっちゃうまい!」と返したそうで、「お水おいしい」史も大きく変化しているのだなと、謎の感動すら覚えてしまったほどだ。横浜では都会魂を込めて、「おいしいに決まってんじゃん?」という返答が決められ、何度も「お水おいしい」コールが繰り返された。やばい、楽しい。
そんな盛り上がる僕らを見て、「みんな何言っても『フー!』って言ってくれる。私のこと甘やかしすぎてMCがちっとも上達しない。」とクレームも忘れない内田彩さん好きです。それに対しても「フー!」という声があがり、「ハァ・・・そーですかー」、この気の抜けるようなMCは、何度聞いてもクセになるので、どうかこのまま、うっちーのMCが上達しませんように。

明けて十曲目、『Party Hour Surprise!』では黄色を振って星空をイメージ。続く『Floating Heart』、そして『Merry Go』、まるでそこは、内田遊園地だった。一曲一曲、違うアトラクションのように顔を変え、けれどそれらは内田彩という一つの場所から発車しているのだ。

パレードを終えた後、バンドメンバーの紹介を挟み、「ここからはビシっとかっこよく歌いたいと思います!」と宣言して始まった『最後の花火』からのロックテイストな流れは圧巻だった。
続く『Like a Bird』、『絶望アンバランス』が、徐々に内田彩を、別の内田彩へと変えていく。今にもガンを飛ばしてきそうな表情が、それを証明していた。
そして迎えた十六曲目の『キリステロ』は、さながらJAM Projectだった。5000人の熱い咆哮を呼び起こすこの楽曲は、まるで内田彩感がない。しかし、それを自分のものにして、歌いこなしてしまうのが、内田彩なのである。声と声が斬りつけ合う空間の爆発は凄まじく、彼女の放つ「サァ、キ リ ス テ ロ」という言葉が、僕の身体を肉片にした。
掛け声がかつてないほど大きく響いた会場に、うっちーも感無量の様子で、「すごいなー!」と一言。その一言はまるで、自分の演じたキャラクターの声を聞き直して、快心の出来に喜ぶかのようなトーンだった。
最後に、僕らを種に見立て、カラフルな花をサイリウムで咲かせてほしいと歌い出した『Blooming!』を歌い切り、ライブは終了した。

彼女の表現する世界に圧倒され続けた僕らは、すぐにもう一度、うっちーを呼び戻そうと声を上げる。
そして、ライブTシャツに着替えて再び出てきたうっちーは、『ドーナツ』からアンコールをスタートさせた。間奏中にギターに追い詰められて逃げ出すうっちー、指を口に引っ掛けてイーッと無邪気な表情を浮かべるうっちーを追う目が楽しい。
5000人のアンコールを舞台裏で聴いていたという彼女は、「イヤーピースを取ってみんなの声聴くと、すっごいうるさいから!」と嬉しそうに言い放つ。初めて会場に来た人に対しては、「ホントはもっとかっこよかったり、ちゃんとしてるんだよ?」とフォローを入れつつ、「みんないつも盛り上がるけど、いつ飽きるの?」なんて言葉まで飛び出し、最後まで、うっちー全開のMCだった。
次に歌った『ハルカカナタ』はファイナル限定で披露され、ツアーで会ってきた人々、そしてファイナル公演に詰めかけた僕らに、静かに優しく、そして美しく、その歌詞を届けてくれた。
そして『アップルミント』はもはや、間違いようがない。まさしく、神曲である。うっちーは、アップルミントっていう曲を持ってるんだぜ。僕ですら、そう誇らしく感じてしまうほどの曲を歌い上げたうっちーの笑顔は、めいっぱいに眩しかった。

一曲ごとに声も、歌い方も、表情も、仕草も変えていくうっちー。その表現力は多彩で、アーティスト内田彩の中には、しっかりと声優内田彩が色付いていると感じた。セットリスト20曲を数えたこのライブでは、20人の内田彩がいた。一人も同じでない、けれども一人残らず、内田彩なのだ。彼女の表現する違う彼女自身に、僕はただひたすらに見惚れていた。これでも、まだ20人。武道館での全曲公演では、さらに多くのうっちーが出迎えてくれるらしい。表現者内田彩への期待は、高まるばかりだ。

・・・おっと、忘れてはいけない。

「お水?おいしいに決まってんじゃ~ん!」

最後にそう、21人目の内田彩が、はにかんだ。

セットリスト
1.スニーカーフューチャーガール
2.Breezin'
3.Sweet Rain
4.Let it shine
5.Go! My Cruising!
6.Growing Going
7.color station
8.オレンジ
9.Sweet Dreamer
10.Party Hour Surprise!
11.Floating Heart
12.Merry Go
13.最後の花火
14.Like a Bird
15.絶望アンバランス
16.キリステロ
17.Blooming!
アンコール
18.ドーナツ
19.ハルカカナタ
20.アップルミント

次回更新予定:未定

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